NSR(NOx吸蔵還元)触媒
希薄燃焼排出ガス中の窒素酸化物(NOx)を効率よく窒素(N2)まで還元して浄化できるNSR(窒素酸化物吸蔵還元)触媒は、ガソリンリーンバーンエンジンやディーゼルエンジンに採用されています。自動車の燃費向上と排出ガスのクリーン化という両ニーズに応えるため、キャタラーはNSR触媒の技術を磨き続けます。
燃費向上に貢献し
NOx吸蔵還元機能を
効率化した触媒
二酸化炭素(CO2)は地球温暖化の原因とされる温室効果ガスのひとつ。そのCO2は自動車の排出ガスの中にも含まれています。CO2の排出量を削減するためには燃費の向上が必要です。そこで、自動車の燃費規制は2000年ごろから、日米欧だけでなく新興国でも強化されてきました。
1km走行あたりのCO2排出量は次の計算式で求められます。
1km走行あたりのCO2排出量
(g_CO2/km)
- 2,320 (g_CO2/L)
- 燃費 (km/L)
近年、各国の規制に対応する燃費向上技術のひとつとして注目されているのが、ディーゼルエンジンと同じように、酸素過剰雰囲気でガソリンが燃焼するリーンバーンエンジン(※)です。このエンジンは、1990年代前半から多くの車に搭載されていました。しかし、酸素過多の状態で燃焼を起こすため、窒素酸化物(NOx)が発生する問題がありました。自動車の燃費向上(CO2の排出量削減)とともに、NOxの排出量削減が要求される現在、日本では内閣府所管のSIP(戦略イノベーション創造プログラム)で「熱効率50%超え」を目標とするスーパーリーンバ一ンエンジンの開発が進められています。
欧州CO2規制(参考)
このようなエンジンを搭載する車のNOx浄化性能を向上させるため、キャタラーは “NOx吸蔵機能を持つ物質”と“触媒機能を持つ貴金属”を最適に配置する技術が不可欠と考えています。そして近年、貫金属の近傍にNOx吸蔵物質を高分散に配置することに成功。「NOx吸蔵」と「NOx還元機能の効率化」を可能にしました。
※リーンバーンエンジンは、排出ガス規制の強化に伴い、2000年代以降に販売された車には、ほぼ搭載されておりません。
NSR(NOx Storage-Reduction)
触媒とは
NSR(NOx Storage-Reduction=窒素酸化物吸蔵還元)触媒は、排気ガス中のNOxを効率よく窒素(N2)まで還元し浄化できる技術です。リーンバーン(希薄燃焼)(※)時に、エンジンから排気されるNOxを吸蔵物質に溜め込み、燃料リッチ燃焼(リッチ)時にエンジンから供給される炭化水素(HC)を還元剤として、NOxを窒素に還元してから大気に排出します。自動車の燃費向上とともにクリーンな排出ガスが要求される現在、NSR触媒には更なる性能向上が求められます。
※リーンバーン(希薄燃焼)とは
燃料が少ない状態でエンジンを稼働させること。少ない燃料で稼働するため燃費が良くなるメリットがありますが、実現が難しいエンジン技術です。この技術では、排出ガスの条件がリーン=酸素が多い環境になるため、NOxから酸素を引き抜くことが困難です。一方、リッチ=燃料が多い環境(リッチ時など)ではNOxから酸素を引き抜くことが容易になります。NSR触媒はリーンの環境でNOxを吸着し、リッチになったときにNOxから酸素を引き抜くことが可能です。
NOx吸蔵と吸蔵NOx還元の
仕組み
(NOx吸蔵:リーンバーン時)
排出ガス中に含まれる窒素酸化物成分(NOx)を「NOx」として吸蔵物質に一時的に蓄えます。
(吸蔵NOx還元:リッチ時)
定期的に還元成分(燃料過剰運転)が流入すると、吸蔵物質上のNOxは脱離し、瞬時に貴金属上で還元浄化。より多くの「NOx」を吸蔵し、速い速度で効率良く還元することを繰り返し、リーンバーンエンジンでも「NOx」を浄化できます。
※担体
アルミナやシリカなど、排出ガス成分の吸着や貴金属などを固定する土台となる粉末。
貴金属と吸蔵材の配置を
最適化する技術
従来技術
当社技術
- 貴金属
- 吸蔵物質
貴金属の触媒機能と吸蔵物質のNOx吸蔵機能を最大限に発揮させるため、キャタラーは独自の担持(※)技術を開発。この技術により、吸蔵物質を貴金属の近傍に高分散に配置させることができるようになりました。この配置技術は、吸蔵されたNOxを貴金属に効率よく引き渡すことを可能にし、触媒全体の“吸蔵還元反応効率の向上”を実現します。
※担持
触媒は細かい粉末状の形態のほうが、粒状や塊状のものに比べて比表面積、質量あたりの活性点が多く有利ですが、取り扱いが難しいという難点があり、粉末状の触媒を担体に固定することが必要となります。この技術を担持といいます。
ウォッシュコート層 電子顕微鏡写真