フロー合成
フロー合成とは、原料をパイプやチューブに流しながら反応を行う合成方法です。原料をタンク内など閉ざされた空間で混ぜて反応させる「バッチ合成」に対し、「フロー合成」には幾つかのメリットがあります。
バッチ合成とフロー合成の比較
「バッチ合成」は複雑な構造を有する生成物の合成に適しておりますが、反応や生産性の調整が難しく、エネルギーコストが高い問題があります。これらの課題を解決し得る方法として「フロー合成」が注目されています。フロー合成は原料を連続的に反応管に流していき、目的生成物を得る方法です。原料を流す速度によって反応時間や生産性の調整が可能であり、反応場を小さくできることから、安全性が高く、設備やエネルギーコストを小さくすることができます。
バッチ合成
- メリット
- 複雑な生成物の合成に適する
- デメリット
- 生産量の制御が難しい
- 反応場が大きく、危険性が高い
- 撹拌、加熱のエネルギーを多く必要とする
- 設備が大きい
フロー合成
- メリット
- 生産量の制御が容易
- 反応場が小さく、安全性が高い
- 撹拌、加熱のエネルギーを小さくできる
- 設備が小さい
- デメリット
- 複雑な生成物の合成に適さない
フロー合成のメリット
近年、生態系などの環境にやさしく、持続成長できる化学産業の体系を推進する環境運動「グリーンサスティナブルケミストリー(GSC)」(※)が注目されています。そのような中、フロー合成は持続可能なものづくりの手法として期待されています。
なぜなら、フロー合成はバッチ合成に比べてエネルギー生産性が高く、廃棄物の排出も少なく抑えられるため、省エネルギー・省廃棄物につながるからです。
省エネルギー・省スペース
フロー合成はバッチ合成に比べて、反応に必要な空間が小さくて済みます。そのため、温度や圧力の調整、攪拌(かくはん)に必要なエネルギーが小さくなり、ものづくりの省エネルギー化を実現できます。また、生産設備をコンパクトにできるため、低コストな製造が可能になります。
柔軟な生産
運転時間や原料の投入量によって生産量を調整できるため、同一の生産設備で少量生産から大量生産まで対応でき、必要な量を無駄なく生成できます。
高い安全性
フロー合成は反応制御性が高く、安全性の高い合成方法です。そのため、危険性の高い物質を用いる場合にも、発火や爆発のリスクを小さくできます。
バッチ合成 | フロー合成 | |
---|---|---|
生産量 | 1バッチ 単位 |
任意 (運転時間) |
反応制御性 | 低 | 高 |
エネルギー コスト |
高 | 低 |
安全性 | 低 (釜全体が反応場) |
高 (最小限の反応場) |
触媒分離 | 必要 (ろ過等) |
不要 |
グリーンサスティナブルケミストリー
(GSC:Green Sustainable Chemistry)
グリーンサスティナブルケミストリーとは生態系に与える影響を考慮し、持続成長可能な化学工業のあり方を提言する環境運動です。日本では、化学製品に対する環境政策は、「グリーンケミストリー」(米国環境省提唱)と、「サスティナブルケミストリー」(欧州経済協力開発機構提唱)を同時に推進することを目的としているため、「グリーンサスティナブルケミストリー」という用語が使用されています。
GSCは、製品設計、原料選択、製造方法、使用方法、リサイクルなど製品の全ライフサイクルを見通した技術革新により、「人と環境の健康・安全」、「省資源・省エネルギー」などを実現する化学技術である。
(産総研:AIST Today 2002.12「GSCの定義」より引用)
つまり、環境への影響を考慮しつつ持続可能な社会を目指す化学技術や化学産業の新しい体系など、従来よりも高効率な化学プロセスの開発が必要となっています。
キャタラーの取り組み
以前より、単一製品を大量生産するものづくりをする分野では、専用のプラント・専用の触媒などを使用したフロー合成が行われています。しかし、専用プラントを構えられない「少量生産」「精密合成」が求められるものづくりでは、フロー合成の実用化は1%以下です。(バッチ合成は99%以上)
キャタラーは、排出ガス浄化触媒で培ったハニカム触媒のテクノロジーを活用した独自のフロー合成技術で、従来バッチ合成でしか行っていなかったものづくりを、より安全に、省資源かつ省エネルギーで実現します。
キャタラーのフロー合成イメージ
事例紹介
ハニカム触媒にファインバブル技術を組み合わせることにより反応性を向上。(特許第 6712732 号)詳しくは「特許情報プラットフォーム」より、特許番号で検索してください
- 実験装置概要図
- 原料が溶けた液をガスと混合してハニカム触媒に送り、
循環させながら反応を進行させます。
- 触媒の形態 :ペレット、ハニカム
- 水素の添加法:通常溶解、ファインバブル