HC-SCR(※)
(炭化水素選択触媒還元)
触媒
キャタラーが開発したHC-SCR触媒は、窒素酸化物(NOx)の還元に尿素を用いないため、車両に尿素水タンクを搭載する必要がありません。そのため、車両の省スペース化に貢献できます。特に、積載スペースが限られる中型~小型トラックに採用するメリットが大きいシステムです。 *HC-SCR = Hydro Carbons Selective Catalytic Reduction
“尿素不要”のNOx浄化用触媒
HC-SCRは、燃料から分解生成した炭化水素(HC)を還元剤として、窒素酸化物(NOx)を無害化するディーゼル車用の触媒システムです。尿素水の補充や尿素タンクの搭載が不要であるため、利便性の向上や省スペース化に貢献します。
尿素SCRシステム
HC-SCRシステム
ディーゼル重量車の
排出ガス規制動向
自動車から排出される「環境」や「人体」に悪影響のある物質を規制する法律は、世界各地で年々厳しくなってきています。ディーゼルエンジンから排出される「窒素酸化物(NOx)」は、大気中で紫外線と反応して光化学スモッグの原因となり、人体に悪影響を与えるほか、酸性雨の原因にもなり、環境への悪影響もあるため、特に規制値が厳しくなっています。
日本におけるディーゼル重量車の
NOx規制動向
ディーゼルエンジンの特徴
ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンと比べて二酸化炭素(CO2)排出量が少なく、エネルギー効率に優れているため、商用車と乗用車の双方に広く普及しています。ところが、高温・高圧での燃焼により窒素化合物(NOx)を多く発生させてしまいます。そのため、窒素化合物(NOx)を還元する触媒が必要になるのですが、ディーゼルエンジンでは理論空燃比(※)よりも空気が多い状態(リーン状態)で燃焼するため、還元反応に必要な炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)が少なく、窒素化合物(NOx)から窒素(N2)への還元が非常に困難です。
(※)理論空燃比について
燃料と空気が過不足なく反応する比率を理論空燃比といいます。
リッチ:理論空燃比14.7以下の状態(燃料が多い)
リーン:理論空燃比14.7以上の状態(空気が多い)
ガソリンエンジンでは意図的に理論空燃比に近づけた制御が可能ですが、ディーゼルエンジンはシリンダー内で圧縮した空気の温度上昇を利用して燃料を自然着火(自己着火)させる仕組みのため、「リーン」状態になります。
ディーゼルエンジンの
排出ガスNOx浄化
ディーゼルエンジンから排出される窒素化合物(NOx)は、還元剤を添加して浄化する技術が使われています。一般的に、尿素水を還元剤として使用する尿素SCR(※)システムが普及しています。尿素SCRシステムでは、排出ガス中に、尿素水を噴射し、加水分解して得られたアンモニア(NH3)と窒素化合物(NOx)を反応させることで無害な窒素(N2)と水(H2O)に還元させています。
尿素SCRシステム
(※)SCR
SCRは“Selective Catalytic Reduction”の略であり、日本語では「選択触媒還元」を意味します。
尿素SCRの課題
尿素SCRシステムは、ユーザーが定期的に尿素水の補給を行う必要があるため、使用地域や車種が限定されているのが実情で、尿素水補給のインフラ整備が課題として挙げられています。小型~中型トラックは大型トラックと異なり、狭い範囲での走行が主流となるため、付近に尿素水のインフラが無い場合には補充のために移動する必要があります。また、新興国などでは急激な発展によって車両数が急激に増加し尿素水のインフラ整備が追い付いていない状況です。さらに、尿素水のタンクを車両に搭載するためのスペース確保という課題もあります。
尿素水不要のディーゼル車
後処理システム “HC-SCR”の特長
HC-SCRシステムは還元剤として燃料から分解生成した炭化水素(HC)を使用するため、尿素水の補充やタンクのスペースが不要です。そのため、特に中型~小型トラックに採用するメリットが大きいシステムです。
HC-SCRシステム
提供:日野自動車
受賞
- 2020年日野自動車「技術開発優秀賞」受賞
- 2018年
日刊工業新聞社/モノづくり日本会議
“超” モノづくり部品大賞:環境・資源・エネルギー関連部品賞「技術開発賞」受賞 触媒工業協会「技術賞」受賞 日野自動車「技術開発賞 優秀賞」受賞