電動車両向け
電池用炭素材料
地球温暖化対策の一環として進む自動車の電動化。ハイブリッド自動車(HEV、PHEV)や燃料電池電気自動車(FCEV)、電気自動車(BEV)の普及によって、二酸化炭素(CO2)排出量を大幅に削減することが期待されています。キャタラーの電動車両向け炭素材料は、電気を貯める(蓄電) & 流す(導電)の2役を備えた高機能材料で、緻密な細孔構造のコントロールを強みとしています。
温室効果ガス排出量ゼロ
に向けた社会づくり
持続可能な社会を実現するために、最も重要な社会課題の1つが「世界全体の気候変動」。気候変動により、これまで低頻度で起きていた異常気象が多発するようになり、気温上昇や降水量増加、乾燥傾向、破壊的な台風や発達した低気圧の頻発、海面上昇、海の酸性化など、自然環境や人の暮らしにさまざまな悪影響を及ぼすと考えられています。
その対策として2015年11月、気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で「21世紀の後半に世界全体で人間の活動による二酸化炭素(CO2)を始めとする温室効果ガス(※)の排出量を実質ゼロにする」という目標が国際合意されました。
※温室効果ガス
(GHG:GreenHouse Gas)
大気圏にあって、地表から放射された赤外線の一部を吸収することにより、地球の大気および海水の温度を上昇させる性質を持つ気体。温室効果ガスには二酸化炭素(CO2)の他にもいろいろあり、京都議定書ではメタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)、パーフルオロカーボン類(PFCs)、六フッ化硫黄(SF6)の6種類、2013年からの京都議定書第二約束期間では三フッ化窒素(NF3)を追加した7種類を削減すべき温室効果ガスと定義しています。
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温室効果ガス | 地球 温暖化 係数※ |
性質 | 用途・排出源 | |
---|---|---|---|---|
CO2 | 二酸化炭素 | 1 | 代表的な温室効果ガス。 | 化石燃料の燃焼など |
CH4 | メタン | 25 | 天然ガスの主成分で、常温で気体。よく燃える。 | 稲作、家畜の腸内発酵、廃棄物の埋め立てなど |
N2O | 一酸化二窒素 | 298 | 数ある窒素酸化物の中でも安定した物質。他の窒素酸化物(例えば二酸化窒素)などのような害はない。 | 燃料の燃焼工業プロセスなど |
HFCs | ハイドロフル オロカーボン類 |
1430 など |
塩素がなく、オゾン層を破壊しないフロン。強力な温室効果ガス。 | スプレー、エアコンや冷蔵庫などの冷媒、化学物質の製造プロセス、建物の断熱材など |
PFCs | パーフル オロカーボン類 |
7390 など |
炭素とフッ素だけからなるフロン。強力な温室効果ガス。 | 半導体の製造プロセスなど |
SF6 | 六フッ化硫黄 | 22800 | 硫黄の六フッ化物。強力な温室効果ガス。 | 電気の絶縁体など |
NF3 | 三フッ化窒素 | 17200 | 窒素とフッ素からなる無機化合物。強力な温室効果ガス。 | 半導体の製造プロセスなど |
※京都議定書第二約束期間における値
出典:全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト
各国のGHG削減目標
気候変動の進行を食い止めるため、各国では温室効果ガス(GHG)削減目標を策定し、削減計画を更新していますが、目標達成には多くの技術分野で大きな改革が必要です。自動車産業では、健康や環境に有害な物質を排出しないクルマ “ゼロエミッション車” (※)の革新技術を確立し、その技術を普及させることでGHG削減への貢献を目指しています。
※ゼロエミッション車:Zero Emission Vehicle(ZEV)
※ゼロエミッション車:Zero Emission Vehicle(ZEV)
搭載された動力源から健康および環境に有害な二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、超微小粒子状物質(PM)など、健康・環境に有害な物質や温室効果ガスを排出しない車を指します。
電気自動車(BEV)や燃料電池電気自動車(FCEV)、重力で坂を下るソープボックスなどが該当。
自動車のGHG総排出量は全体の約20%を占めているだけに、厳しい排出ガス規制によって解決することが急務です。アメリカのカルフォルニア州は、厳しいZEV(Zero Emission Vehicle)規制(※)を導入し、その後も強化を継続。中国でもNEV(New Energy Vehicle)規制を導入するなど、各国が排出ガス規制を実施しています。
※ZEV(Zero Emission Vehicle)規制
1990年、米国のカリフォルニア州内で一定台数以上を販売する自動車メーカーに対し、ZEVを一定比率以上販売することを義務付けた制度。規制は年を追うごとに厳しくなっています。2018年からはZEV販売比率が16%となり、ZEV対象車は電気自動車(BEV)と燃料電池電気自動車(FCEV)、そしてプラグインハイブリッド自動車(PHEV)です。
同規制を導入している州は、2019年11月時点でカリフォルニア州のほか、アリゾナ、マサチューセッツ、ニューヨーク、オレゴン、メリーランドなど10州に上っています。また、欧州のイギリス、フランスは2040年までに、インドは2030年までに乗用車・バンの新車の販売をZEVに限定し、ICE(ガソリン・ディーゼルなどの内燃機関)を搭載した車両の新車販売を禁止することを表明しました。
各国の削減目標
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中国 | GDP当たりのCO2排出を 2030 年までに 60-65 %削減 (2015年比) ※CO2排出量を2030年までに減少に転じさせ、2060年までにカーボンニュートラルを目指す |
---|---|
EU | 2030 年までに 55 %削減 (1990年比) ※2050年までにカーボンニュートラルを達成 |
インド | CO2排出を 2030 年までに 10 億トン削減 (2005年比) ※2070年までにネットゼロ(※)を達成 |
日本 | 2030 年までに 46 %削減 (2013年比) ※2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指す |
ロシア | 2050 年までに 60 %に抑制 (2019年比) ※2060年にカーボンニュートラルを達成 |
アメリカ | 2030 年までに 50-52 %削減 (2005年比) ※2050年までにカーボンニュートラルを達成 |
2021年11月現在
出典:全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト
※ネットゼロ(Net Zero)
ネットゼロとは、「温室効果ガスあるいは二酸化炭素(CO2)の排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにする」という意味です。排出量を完全にゼロとすることが現実的には難しいため、排出量を正味(=ネット)ゼロとすることを指しており、カーボンニュートラル(CO2ネットゼロ)という言葉とほとんど同じ意味で使われます。
温室効果ガスにはCO2だけでなく、メタンなどの地球環境に影響を与える全ての排出ガスを含み、温室効果ガス排出量から森林などの吸収量などを差し引いて合計がゼロになる状態を指します。
加速する自動車の電動化
世界では各国が温室効果ガスの排出量削減に向けた取り組みを本格化させています。2021年4月に開かれた「気候変動サミット」で日本は2030年の温室効果ガス排出削減目標について、2013年度比で46%削減を目指すと表明。米国は2030年に2005年比で50~52%減にするとの新たな目標を発表しました。また、欧州連合(EU)は、2030年までに1990年比で少なくとも55%減らすとしています。このような流れを受け、自動車業界が注力しているのが、燃費の向上や自動車の電動化です。特に電動化は次世代自動車のトレンドを表現した造語「CASE」(※)の一要素として、一般の関心も高まっています。
CASEは、2016年にダイムラー(現 メルセデス・ベンツ)が発表した言葉です。Connected(常時インターネット接続化)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(共有化)、Electric(電動化)の頭文字をつなげた造語で、100年に1度の大変革期と言われる自動車業界の大きなテーマを示しています。
※CASE
- ① Connectedコネクテッド(つながる) ① Connected(コネクティッド / 常時インターネット接続化)
- ② Autonomousオートノマス(自動運転) ② Autonomous/Automated(オートノマス / 自動化)
- ③ Shared & Servicesシェアリング(共有とサービス) ③ Shared(シェアリング / 共有化)
- ④ Electricエレクトリック(電動化) ④ Electric(エレクトリック / 電動化)
の頭文字をつなげたもの。
2016年のパリモーターショーでダイムラー(現 メルセデス・ベンツ) CEOのディーター・ツェッチェ氏(当時)が発表した中長期戦略の中で用いられたのが始まりです。変革の時代を迎えている自動車産業の動向を象徴するキーワードで、自動車のハード面の変化とともに、異業種を交えたモビリティサービスの重要性を示唆しています。
① Connected(コネクティッド / 常時インターネット接続化)
② Autonomous/Automated(オートノマス / 自動化)
③ Shared(シェアリング / 共有化)
④ Electric(エレクトリック / 電動化)
の頭文字をつなげたもの。
2016年のパリモーターショーでダイムラー(現 メルセデス・ベンツ) CEOのディーター・ツェッチェ氏(当時)が発表した中長期戦略の中で用いられたのが始まりです。変革の時代を迎えている自動車産業の動向を象徴するキーワードで、自動車のハード面の変化とともに、異業種を交えたモビリティサービスの重要性を示唆しています。
- ① Connectedコネクテッド
(つながる) - ② Autonomousオートノマス
(自動運転) - ③ Shared & Servicesシェアリング
(共有とサービス) - ④ Electricエレクトリック
(電動化)
電動車両の種類
電動車両とは、古くは外部電源を用いて充電したバッテリーを動力源とする電気自動車(BEV)のことでした。しかし現在では、電気をエネルギー源とし、電動機を動力源として走行する自動車という広い意味で捉えられるようになり、ハイブリッド自動車(HEV)、外部充電機能を追加したプラグインハイブリッド自動車(PHEV)、燃料電池電気自動車(FCEV)も電動車両に含まれるようになりました。
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ハイブリッド自動車
ハイブリッド自動車(HEV, Hybrid Electric Vehicle)はエンジンと電気モーターなど異なる複数の動力源を搭載した自動車です。走行中でも必要がないときにエンジンを停止したり、電気モーターがエンジンを手助けしたりするため低燃費を実現でき、CO2の排出を低く抑えられます。HEVは減速時にタイヤの回転で発電するなどしてバッテリーに充電します。そのため、外部電源に接続して充電する必要がありません。
電気自動車
電気自動車(BEV, Battery Electric Vehicle)は搭載したバッテリーを外部電源によって充電し、電気モーターを駆動して走行する自動車です。ガソリンや軽油を使わないため、温室効果ガスや大気汚染物質を車から排出しません。すでに普及が始まっていますが、1回の充電で連続走行できる距離を伸ばすことや、充電インフラの整備が課題となっています。
プラグインハイブリッド自動車
プラグインハイブリッド自動車(PHEV, Plug-in Hybird Electric Vehicle)は外部電源を用いた充電が可能なHEVです。
PHEVは通勤や買い物など近距離の移動ではガソリンを使わないBEVとして走行が可能。BEVとしての走行距離を超える長距離のドライブはHEVとして楽しめます。PHEVはHEVに続く次世代環境車として自動車メーカーによる商品開発が進められています。
燃料電池電気自動車
燃料電池電気自動車(FCEV, Fuel Cell Electric Vehicle)は「燃料電池(=スタック)」を搭載し、電気モーターで走行する自動車です。燃料電池は水素を燃料とし、酸素との電気化学反応によって電気エネルギーを取り出します。FCEVはガソリンや軽油などの化石燃料で走行する車とは違い、二酸化炭素(CO2)を車から排出しない究極のエコカーです。また、水素はさまざまな物質から取り出すことができるため、尽きることのないエネルギーと言えます。FCEVの利便性を高めるためには、水素を活用するための社会基盤の整備が必要です。
ハイブリッド自動車が普及
次世代車はBEVやPHEVなど多様化
米国のカリフォルニア州などで導入されているZEV(Zero Emission Vehicle)規制の対象となる自動車メーカーは、規制をクリアするために電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、燃料電池電気自動車(FCEV)を開発しています。広く普及しているハイブリッド自動車(HEV)は、2018年にZEV規制の対象から外れ、ZEVに含まれなくなりました。そのため、自動車メーカー各社はBEVやPHEVの市場への投入を進めています。
欧州では、2021年以降に販売される新車の平均二酸化炭素(CO2)排出量を95g/km以下とする規制が開始。米国のZEV規制と欧州のCO2排出量規制、そして市場のニーズに応えるためには、さまざまなタイプの電動車両を投入することになるでしょう。キャタラーはHEV、BEV、PHEV、FCEVのすべての電動車に搭載されるリチウムイオン電池(LIB, Lithium-Ion Battery)用の炭素材料や、LIB以外の新たな用途に使われるカーボン材料などについて開発し、性能とコストパフォーマンスの向上を図ります。