事業継続マネジメント
(C-BCM)
キャタラーは地震・津波など多様な脅威に備える独自の事業継続マネジメントC-BCM (Cataler - Business Continuity Management)を構築・運用しています。人命・安全を最優先に、地域社会への貢献とお客様への製品供給を継続できる体制を確立し、事業継続の取り組みを続けています。2014年には、ISO22301(※)の認証取得。キャタラーグループすべての拠点での認証取得を進めています。
※ISO22301
事業継続マネジメントシステム(BCMS) に関する国際規格。地震・洪水・台風などの自然災害をはじめ、システムトラブル・感染症の流行・停電・火災といった事業継続に対する潜在的な脅威に備えて、効率的かつ効果的な対策を行うための包括的な枠組みを示しています。
キャタラーの事業継続マネジメント活動(3分5秒)
キャタラーでは、「人命第一」「地域社会」「供給責任」「風化防止」の4つの基本指針を掲げて活動を行っています。2011年3月に起きた東日本大震災の際、多くのお客様、サプライヤーで甚大な被害が発生し、キャタラーでも事業活動が中断するリスクにさらされました。これを機に、キャタラーグループ全体で事業継続マネジメント(BCM) 体制を構築し、不測の有事への備えに真っ向から取り組む決断をしました。事業継続マネジメントをしくみ化し、PDCAを回すことで活動の質をさらに向上させています。
地震・津波リスクをモデルケースとして、
「発生頻度」と「経営への影響度」の2つの指標からアプローチ
地震対策は東海地震対策として、従来より人命最優先の観点から進めてきました。さらに、東日本大震災以降、震度7による影響の再検証を行い、その結果に基づいた耐震補強の追加を完了しました。津波対策として、本社に隣接する山林を津波避難地とし、従業員だけでなく地域の方々も利用できるように、避難階段や夜間照明を整備しました。この取り組みは自治体からも注目され、2012年3月、掛川市で第1号となる「津波避難施設協定」を行政と締結。企業と地域との連携モデルとなっています。
事業継続基本指針
- 1. 人命・安全最優先
- 従業員およびその家族、ならびに関係者の人命・安全を最優先にする
- 2. 地域社会への貢献
- 地域との連携を強化し、地域社会へ積極的に貢献する。
- 3. お客様への確実な供給継続
- 事業継続体制の維持・向上に努め、お客様への安定供給を確実に果たす。
- 4. 事業継続マネジメントシステム(BCMS) (※)の継続的改善
- 事業環境の変化や訓練結果を定期的に評価し、事業継続計画を改善する。
※事業継続マネジメントシステム(BCMS)
組織の「事業継続能力」をPDCAサイクルに基づき、管理するしくみのこと。「事業継続能力」とは、様々な脅威(例:地震や火災・爆発、新興感染症、テロなど)により組織の重要事業が中断したとしても、ステークホルダーが望むレベル感・スピード感で継続・復旧させる組織の対応能力のことを指します。
事業継続マネジメント(BCM)推進体制
平常時はBCM各組織でインシデント(大地震、火災・爆発、台風・豪雨、感染症等)発生時に想定される被害に対するリスク低減活動や、被災時の対処訓練といった、組織別訓練・教育などの活動を計画的に進め(Plan/Do)、内部・外部監査を受審(Check)、活動全体をBCM推進会議にてトップレビューを受けています。次年度の各組織の活動計画に指摘や提言を反映(Action)して、PDCAサイクルを回しています。
ひとたび、インシデントを検知すると、緊急時の対策本部(RHQ本部)(※)を設置し、被害状況の確認を行った後、インシデント判定会を開きます。ここでBCP発動の要否を判定します。BCPが発動された場合、BCM各組織は、事業継続計画に基づき復旧活動を開始します。
※RHQ : Restoration HeadQuarters
BCM各組織
迅速な安全確認と製品供給の再開に向け、体制整備を行っています。発災直後は初動組織が活動し、人命救助や従業員支援を行います。安全が確認された翌日から、工場復旧組織・製品供給組織・復旧供給組織の連携により、生産の再開や海外拠点での生産を進める手順です。
2021年現在は以下の通り編成されています。
【本社】初動組織、工場復旧組織、製品供給組織 /【ARK:研究開発拠点】初動組織、復旧供給組織
有事に対する備え
いつ起こるか分からない大地震に備えハード、ソフト両面で対策を取っています。ハード面では従来からの建物・設備の耐震補強や落下物対策、タンク類からの危険物漏洩対策に加え、2014年にはキャタラー独自の防潮堤を設置完了。そのほか、事業継続に欠かせない情報システムのバックアップや帰宅困難時用の食料備蓄も行っています。ソフト面では津波避難訓練や防災訓練に加え、発災から復旧までのシミュレーション訓練を継続し、有事への対応を万全にするための活動を進めています。
防潮堤
シミュレーション訓練
ハード
- 従業員と家族、関係者の人命・安全を最優先にする
- 「静岡県第4次地震被害想定」では、キャタラー本社敷地内への津波の浸水は1m以下と想定されました。しかし、キャタラーは「構内には1滴たりとも津波を入れない」との目標を立て、自社で津波防潮堤と河川の水門を建設しました。また、全従業員にヘルメット・雨具などの配布、家庭用の防災用品の斡旋などを行い、防災意識を高めるようにしています。
津波対策の防潮堤と水門
ソフト
事業継続訓練の実施
2011年から独自の事業継続マネジメント(C-BCM)の一環として年に1回、役員をはじめ、すべての従業員を対象とした防災訓練や地震避難訓練を行い、シミュレーションを積み重ねています。これらの訓練を通して、本社機能が不全となった場合でも継続すべき業務を特定し、緊急対応の手順を確認しています。
安否確認訓練
2009年に安否確認システムを導入しました。同システムが有事の通信手段として機能するよう、平時より大地震での被災を想定した応答訓練を定期的に実施し、いつでも対応できるよう備えています。さらに、地震対策以外でも同システムを有効活用しています。例えば、大型台風に見舞われた場合、台風通過後に安否メールを配信して家庭の被災状況を調査しています。また、新型コロナウイルス感染症への対応として、連休が明ける前に従業員の体調調査メールを配信しています。
研究開発機能の事業継続戦略
キャタラーには、国内外合わせて8つの生産拠点があります(2021年10月現在)。しかし、研究開発の拠点は日本国内にしかありません。日本でインシデントが発生し、被害が甚大であった場合、生産機能は海外拠点で代替可能ですが、研究開発の機能は停止してしまいます。そこで、5年後・10年後の競争力を確保するために、研究開発拠点を増強するのに合わせ、より災害リスクの低いエリアに建設することにしました。
2017年11月に竣工した研究開発拠点「キャタラー アーク・クリエイション・センター ARK Creation Centre(以下:アーク)」は防災ナンバーワン施設を目指して建築設計を行いました。アークは研究棟(免震/ 4F建て /14,400㎡)・実験棟(耐震/ 一部2F建て/ 4,800㎡)・試験棟(耐震/ 4F建て/ 5,500㎡)で構成されています。
免震構造と耐震構造の違い
免震
免震構造とは、建物の基礎部分に地震の震動を軽減させる免震装置をつけ、その上に建物がある構造
耐震
耐震構造とは、地震の揺れに抵抗できる強度と粘りを満たすようにつくられている建物の構造
地域との連携・貢献
掛川本社では、津波対策として隣接の防災林(海抜30m)へ避難階段を設置しました。この避難施設は地元の方々にもご利用いただけるようになっています。また掛川市の地震・津波対策寄附金事業に対する協力も初期段階から継続してきました。
これからもさまざまな活動を通じ地域との連携強化を進めていきます。
津波避難施設の使用に関する協定(2012年3月)
地域住民も利用できる避難路の整備