Exhibition 2018
ディーゼル車用触媒技術
HC-SCR system
Exhibition 2018
尿素SCRシステムと同等以上の窒素酸化物(NOx)浄化性能を実現したディーゼル車用の触媒システム「HC-SCR」。排ガス中の未燃焼の炭化水素(HC)、または、燃料から分解生成したHCを還元剤としてNOxを無害化するもの。尿素水の補充が不要であるため、利便性を向上させ、尿素タンクを無くすことで車輌の省スペース化に貢献します。
自動車から排出される「環境」や「人体」に悪影響のある物質を規制する法律は、世界各地で年々厳しくなってきています。
ディーゼルエンジンから排出される「窒素酸化物(NOx)」は、大気中で紫外線と反応して光化学スモッグの原因となり、人体に悪影響を与えるほか、酸性雨の原因にもなり、環境への悪影響もあるため、特に規制値が厳しくなっています。加えて、ディーゼルエンジンでは制御上の問題で空気の割合が高くなる(リーン)※ため、NOxを浄化するための還元剤が不足します。よって、排出ガスに含まれるNOxの浄化が非常に困難といわれています。
燃料と空気が過不足なく反応する比率を理論空燃比といいます。
リッチ:理論空燃比14.7以下の状態をリッチという(燃料が多い)
リーン:理論空燃比14.7以上の状態をリーンという(空気が多い)
ガソリンエンジンでは意図的に理論空燃比に近づけた制御が可能であるが、ディーゼルエンジンはシリンダー内の高温で自然着火(自己着火)する仕組みのため、「リーン」状態になります。
厳しくなる窒素酸化物(NOx)排出規制に対して、エンジン制御での対応は限界があり、触媒による浄化が求められています。尿素SCRシステムは排出ガス浄化技術の一つで、ディーゼルエンジンの排気中のNOxを浄化する技術です。SCRは Selective Catalytic Reduction の略であり、日本語では「選択触媒還元」を意味します。NOxを浄化するには還元剤が必要であり、その還元剤として注目され、主流になりつつあるのがアンモニアです。アンモニア(NH3)がNOxと化学反応することで窒素(N2)と水(H2O)に還元されることを応用したもので、火力発電所や船舶の排ガス処理システムにヒントを得ています。ただしアンモニアを車両に積むのは危険なので尿素水をタンクに入れて搭載し、これを排気中に噴射することにより高温下で加水分解させアンモニアガスを得ています。
2018年現在、日本および欧米先進国においてディーゼル重量車の後処理装置として、多くの車輌で尿素SCRシステムが採用されています。しかし、ユーザーが定期的に尿素水の補給をおこなう必要があるため、使用地域および車種が限定されているのが実情で、尿素水のインフラ整備ができていないことが課題として挙げられています。
小型~中型トラックは、大型トラックと異なり、狭い範囲での走行が主流となるため、尿素水のインフラが無い場合には補充のために移動をする必要があります。また、新興国なども急激な発展によって車輌数が急激に増加し尿素水のインフラ整備が追い付いていない状況です。
その他にも、尿素水のタンクを車輌スペースに確保する必要があります。
HC-SCRシステムは還元剤として燃料(HC)を使用するため、尿素の補充やタンクのスペースが不要になります。
そのため、特に中型~小型トラックに対して効果的なシステムです。
活性種Mを独自に変化させることで幅広い温度域でNOx浄化が可能なため、HC-SCRシステムの触媒反応で、尿素SCRシステムと同等のNOxエミッションを実現しました。
HC-SCRシステムを搭載した車両は、尿素タンク、尿素供給装置、SCR触媒等が不要であり、後処理システムがコンパクトなため、架装性、搭載性に優れており、幅広いユーザーの要望に応えることが可能になります。
従来の4トン車の尿素SCRシステムと比較して、コストで30%減、重量で80Kg減、スペースで50L減を達成している。
2010年から国内、中小型車において販売を開始し7.2万台の生産実績を有する。現在市場で使用されている国内の中小型のディーゼル車において、DPF上のPMを燃焼再生するための燃料消費が28%低減可能なことから、中小型車両が運転時における年間の燃料削減分を推定すると、年間で軽油を4.5kL、CO2を11,600トン削減できることになる。
今回、本後処理システムは日本国内のポスト新長期規制への対応で適用したが、今後、新興国で導入される排出ガス規制に適応可能な後処理技術であり、尿素水のインフラ整備がされていないアジア諸国始め新興国に展開が期待される。